2007年 第50回日本腎臓学会総会特別企画
男女共同参画委員会設立シンポジウム
「男女で育む腎臓学会の未来像・女性腎臓専門医へのキャリア支援」を振り返って
会場からのコメント(ご発言順・敬称略)
愛知医科大学 腎臓・膠原病内科 今井裕一
腎臓学会の教育担当の幹事をしています。皆さんのご発表を聞いて、いろいろな現状がよくわかりました。腎臓学会に関しては、理事に女性がいないなどの問題は、今後改善されていくのではないかと感じています。私はこれまで腎臓学教育の問題にかかわってきましたが、女性医師、男性医師であるという前に、地域の医師の分布の格差がものすごく大きいのです。県全体で腎臓専門医が少ないところはどのように裾野を広げていくのかという問題があり、その次に、女性のキャリアアップの問題があります。このような順番に解決していかないといけない状況です。なかなか解決することは容易ではないように感じています。
最近、いろいろなところで医療崩壊という言葉が使われていますが、現状は崩壊していると判断されます。これからは再生が課題になってきます。女性医師が活躍しないと、もう立ち行かないところがあります。若い男性医師は、「女性は当直免除とか、どこかへの出張は免除するとか、」それは不平等であるとかという批判的な意見がでます。かれらの発言・意識自体が、男性医師の首を絞めているわけです。女性医師が、例えば午前中あるいは日中に勤務してくれると、男性はその日中に休息をとればいいのです。そういう仕事のスタイルに医師の社会全体を変えていかないといけないのではないかと思います。そのような意味で、医師・国民の意識改革も必要であると感じています。
杏林大学医学部泌尿器科 東原英二
自己紹介します。私は日本腎臓学会の理事ではありますが、泌尿器科の医者です。現在は杏林大学病院の病院長をしています。
今のお話を聞いていて、女性医師が持っている問題というのは、確かに育児・出産というところで男性医師よりもしわ寄せが来ているかもしれませんが、全体に男女を問わず医者が置かれている苦しい立場が反映されているような気がします。
まず一番に、9時~5時で働いたら一番いいと思いますが、それは本来当たり前の、最低の要求だと思います。それが医者では今までなくて、私自身も40歳代中頃までは週100時間以上働いておりましたし、それが当たり前だと思って働いてきました。しかし今、立ち去り型といわれるように、そういう非常に過酷な労働に耐えることはもうやめてしまいたいという意識がだんだん広がって来ていると思います。患者と医師の関係の変化も、過酷な労働条件を敬遠する傾向と関係していると思います。労働条件のよりましな開業医を選択する人が増え、勤務医が減っています。新研修システムが導入され、労働条件を重視する傾向が助長されたと思います。
東大の前の病院長の永井良三先生が全国学部長・病院長会議の仕事として、大学病院でアンケートを取りました。何と、大学病院の勤務医の数が5、6年前に比べて60%ぐらいになっていました。40%減っているということです。それを見て私は非常に驚きました。 今、この会場で提案されているフレックスタイムやサポートシステムなどは、逆に一層実施不可能になっているのが、われわれの労働環境ではないかと思います。
話が変わりますが、病院長になって保育所もつくったらいいと思って、いろいろ試算を行ってみたのですが、年間で約1,000万円の補助が必要とされました。しかし、今病院は赤字です。赤字を圧縮しようと思って一生懸命やっている最中に、年に1,000万円はかなり大変です。そういう状況において、みんなの労働のことも、本当はいい条件も考えてあげたいというのがモチベーションとしてあるのですが、難しいというのが現実です。
今の日本のわれわれが置かれている環境は厳しく、OECD中低位にある医療費を、政府は更に抑制を厳しく実行していく姿勢です。これから更に厳しくなるという、そういう状況の中にわれわれは置かれているのではないかと危惧しています。
司会(武曾):私はejnet(NPO法人「女性医師のキャリア形成、維持、向上を目指す会(イージェイネット:ejnet: www.ejnet.com)というNPO法人で女性医師のことを扱っています。赤字を覚悟で保育所をつくると、女性医師があつまってきて働いてくれることで、結局黒字になったという病院をたくさん知っていますので、先生にご紹介いたします。これは本当の話です。やはり医者が集まれば絶対に収益は上がりますので、保育所建設をいかに決心するかはトップの力です。
自治医科大学 腎臓内科 湯村和子
一般演題発表と重なり途中からの参加で申し訳ありませんが、水入先生のご発表の中にもあったように、専門医などの書類1つをとっても長の印鑑とか承諾を得なければなりません。まずは、せっかく腎臓学会でこういう男女共同参画の企画をしていただいた以上、学会の理事とか、大学や認定施設の指導的立場にある先生方にこのシンポジウムに参加していただきたい。学会誌に今回の内容は掲載されるかもしれませんが、やはりそういうポジションにおられる方は女性医師の問題を、実際に来て実感していただかないといけないと感じました。参加人数がどうかと気になってきましたが、少なすぎると思います。
司会(武曾):今回の設立シンポジウム開催に際しては、会場を設定していただくのに菱田先生に非常に苦労していただきました。独立してプレナリー・セッションのようにしてやればもっとたくさん来られると思いますが、今回は第1回を開催するということが非常に大きな意義のあることでしたので、まずそれから始めました。次回からはもっとたくさんの方が参加できるような形にして、実質を上げていくというのが非常に重要だと思います。今日は既に専門医制度がお昼の総会で 正式に制度変更が認められました。これは去年のことから考えると大進歩ですので、そこをまず評価していただいて、次回はさらに多くのご参加が得られるよう、工夫したいと思います。
虎の門病院健康管理センター JSWN(女性腎臓病医の会)代表 原 茂子
このたびは男女共同参画委員会シンポジウムの第1回が、腎臓学会で開催できましたことおめでとうございます。JSWNの代表の立場から、私自身大変うれしく思っています。
この会が開かれるまでの経緯を、メールで拝見しておりますと、短期間でありながら、ここまで皆さんが、一生懸命やっていらっしゃる様子が、手に取るようにわかりました。
働く女性の医師の環境をいかによくしていくか、それにより、男性のドクターにとってもいい環境を提供するということではないかと思います。最終的には男性、女性と区別をしないで、一人の医師としてどう生きていくか、どう仕事をしていくかということに、最終的なゴールが設定されるのではないかと思います。
それには男性、女性関係なく、医師の資質と、その医師が何をやりたいか、どういう生き方をしたいかということにかかわってくるだろうと思います。
私自身の経験ですが、虎の門病院に就職して出てくる前に、義兄が、男の医者の世界の中でどう生きていくか、これだけは肝に銘じておくようにと、言われた言葉があります。それは、「女は3本毛が少ない」と。それはなぜかというと、男性の医師に比べれば女性の医師はそれぐらいの評価しかできないということを言われました。当時はそのような評価であったかと思います。
今は、女性医師が増えてきて、活躍もすばらしいものがあります。今後はますます実力をつけていただきたいと思います。
もう一つ、何年前ですか、もう病院を辞めようかと思った時代もありました。これは誰でも経験することだと思います。その時に家族が私に「女性はいいよね。辞めれば家庭に入れるから。辞める前に次の職場を考えてから辞めるように」と言われました。ひとりの医師として考えることの基本であると思います。
それも家庭と仕事をして行く基本となっています。 今後は学会における女性の地位を向上することが一番大事だろうと思います。それには、やはり個人の医師の資質と技量を蓄積していくことが非常に大事だろうと思います。ぜひ、男性の先生方もそういう目で、時には女性にやらせてみよう、トライさせようと。そして、その時に女性が本当の実力を発揮できるように自分を鍛えておくということが大切ではないかと思います。
この会がますます発展して、そのうち男女に関係ない環境が整備されていけば、すべての働く医師にとっていい方向に行くのではないかと思います。
今後ますます発展されることを祈念して、メッセージとさせていただきたいと思います。
浜松医科大学第一内科 菱田 明
皆さん、こんにちは。私は今回、50回の総会の会長を引き受けさせていただいて、いろいろなところで発言をしなければいけない立場にあるのですが、今が一番緊張しています。私はこの会でのあいさつを作るのに一番苦労しました。
実は、腎臓学会の理事長になって、自分の任期の2年の間に腎臓学会に対して一体自分は何ができるだろうかということをいろいろ考えてみました。その中の一つとして女性医師の問題を取り上げたいと思いました。決して女性の医師を育てようとかそういう高邁な気持ちからきたわけではなくて、静岡県の医療を見ていますと、本当にもう医療崩壊が激しい、女性の医師に頑張っていただかない限り駄目だという実感からです。
それで何をやったかというと、まず、インターネットで「一体、日本の女医の人たちはどのような活動をされているだろうか」ということをいろいろ調べてみました。そうしたら、かなりやっておられて、その中に腎臓関係の人が多い。それを見た途端に、私は、「こうした活動を積極的にやっておられる方々に、この問題はもう任せておけばいい」と確信しまして、「委員会を立ち上げて、その委員会委員長に名前の挙がりました武曾先生に任せておけば、理事長は武曾委員長と委員会の指示に従って動けばよい」と思って、言われるままに動いているというところではあります。
それで、今回こういう招待を受けまして非常に緊張したのは、多分、「何で呼ばれたのだろうか。きっと私が本当にまじめに考えているかどうかということを試そうという話だろう」と考えたからでした。先ほどのこの会場の話を聞いていまして、「本当に、これは任せておいていい」と全くそう思いました。実に頼もしい意見があって、私が出る幕ではないなと思いました。しかし、試問に答えるために幾つかの勉強をしてまいりました。
平成11年6月23日は、この日はたまたま私の誕生日なのですけれども、男女共同参画社会基本法というものができて、その前文の中で、「この21世紀の日本において男女共同社会をつくっていくということがこの日本の未来を決定する」、ということを謳っています。
日本の医療に目を転じますと、今日本の医師の中での女性の占める割合が、最近は増えているのかもしれませんが、2004年で17%となっています。2005年の医師国家試験の合格者の34%が女性ということになっています。このことは、「男女共同参画社会をつくることが、日本の医療の未来を決定していく」、のだということを考えるべきだろうと思います。
さらにもう一つ、腎臓学会に目を転じますと、先ほども紹介されておりましたけれども、腎臓内科の中の女性医師の占める割合は23%、そして、女性医師の専門医が15%、指導医が7%、そして、評議員の数はわずかに6%前後というところでしょうか。腎臓内科医の中には若い女性医師が多いということがあってこのような数値になっているのかもしれませんが、日本腎臓学会を支える女性医師の人たちが多く出てきてくれない限りこの日本腎臓学会も成り立たないのではないかというのが、最近このCKDを中心として日本腎臓学会がいろいろな活動をやっている中での私の実感です。ぜひ、今日のように、非常に元気のいい皆さま方に積極的に参加していただきたいと思います。
さらに私は試問に答えるためにもう一つ勉強してきました。平成15年に政府は「女性のチャレンジ支援策」ということで3つの重要な提言をしています。1つ目は、指導的地位にある女性の割合を平成22年までに30%にするということです。2つ目は、身近なチャレンジモデルをつくるということです。そして3つ目が、それを支えるシステムをつくるということであります。
いろいろな条件があり、今の3つのうち腎臓学会の中で一体どれが最初に達成できるのかはわかりません。しかし、今日お話をお伺いしていますと、いわゆるモデルとなられる方はたくさんおられるということで、このモデルがこの日本の女性医師や女性医学生の中に広く伝わるということが必要かなと思います。それを行うことが、腎臓学会が行わなければいけない仕事の一つかなと感じながら先ほどのお話を聞いていました。
また、そのシステムを腎臓学会がどのようにできるかということが重要だろうと思います。先ほどお話ししましたように、武曾先生に中心となっていただいている委員会が提案されることを実行すればいいということで、実は今日のこのシンポジウム自体も、武曾先生の提案どおり設定させていただきましたし、託児所の設置、それからまた女性医師の相談コーナーというものもつくらせていただきました。そして、これを当分の間、学術総会、それから東部・西部の腎臓学会で行うことということを先日の理事会の決定とさせていただいて、各会長さんにお願いするという形になっているのが現状です。
委員会を立ち上げていただいてから短い間に、先ほどの専門医の制度のシステムのこともありますけれども、いろいろな提案をいただいて、そしてそれを現実にすることができました。私は本当にありがたいことだと思っています。これも、この委員会の先生方が非常に一生懸命取り組んでくださったことだろうと思います。この委員会の先生方にさらにこれからもこういった提案を続けていただいて、日本腎臓学会が男女共同参画の活動のモデル学会となれるような形になっていければありがたいと思っています。
冷や汗をかきながら試問に答えた感じですけれども、今後もまたこの会場の皆さま方のご支援を得て日本腎臓学会がこの活動を推し進めていければありがたいと思います。今日はどうもありがとうございました。 |