社団法人 日本腎臓学会理事長(岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学教授)
槇野 博史
1959年に創設された日本腎臓学会は、「腎臓学及びこれに関連する諸分野の研究・調査・知識の普及に努め、腎臓学を通して社会に貢献する」ことを目標にして活動して参りました。最近の私どもの調査によりますと慢性腎臓病(CKD)患者数は1,330万人に達し、成人の8人に一人はCKDという計算になり、CKDは21世紀に出現した新たな国民病と言えます。CKDがあると進行して透析が必要となったり、心・血管疾患をおこし易いことが明らかとなってきました。検尿によるCKDの早期発見は重要で、治療法の進歩により、CKDは良くなってくることが明確となってきました。また、急性腎障害(AKI)についても、診断と治療法の開発が早急に望まれております。国民の健康維持、福祉向上における本学会の役割、使命は一層大きなものになっています。
さて、私は2010年6月の神戸で開催された第53回日本腎臓学会総会において理事長に再選されました。この2年間にCKD対策を推進して参りましたが、その進捗状況も含め今後の日本腎臓学会の取り組みを述べさせて頂きますので、ご協力の程宜しくお願い申しあげます。
1.「社会に開かれた腎臓学会の活動の展開」をします。
生活習慣の変化を背景として腎臓病の様相は大きく変化しています。腎臓学会は地域医師、行政、国民と連携し、国民病であるCKDを克服する必要があります。
CKD対策の推進と学際的活動の強化が急務です。下条文武元理事長により開始され、菱田明前理事長によって進められてきたCKD対策を更に発展させるために慢性腎臓病対策委員会を引き続き重点事業推進委員会とし、「臨床研究推進委員会」と「学際的展開委員会」とを新たに設け、腎臓学会の組織改革を行いました。
1) 腎臓病総合レジストリー(J-KDR: Japan Kidney Disease Registry)の活用および臨床研究の推進
J-KDRはJ-RBR(日本腎生検登録:Japan Renal Biopsy Registry)を発展させたもので、疫学・臨床研究を展開する上での基盤を構築する本邦で初めての腎臓病に関するデータベースです。進行性腎障害など厚生労働省の班研究において更にJ-KDRの活用をはかることにより班研究を側面から支援するとともに、腎臓学会が主導する腎疾患診療のエビデンス形成のための介入型臨床研究体制を確立し世界にエビデンスを発信していく所存です。会員のJ-KDRへの積極的な参加をお願い申し上げます。
2) 地域における行政・医師会との連携強化によるCKD対策の推進
CKD対策をさらに進めていくためには地域での活動が重要です。広報委員会では各都道府県にキーパーソン、慢性腎臓病対策協議会では各県代表者を選定して活動を開始しております。厚生労働省は昨年度よりCKD対策の推進のために慢性腎臓病(CKD)対策事業による、各都道府県でのCKD対策の補助を開始しております。腎臓学会は慢性腎臓病対策協議会の中核学会として、行政・日本医師会とも連携して地域におけるCKD対策活動を展開しますので、ご協力ください。またCKDに対する学際的活動の強化をはかり、CKD対策を実のあるものとします。
2.日本腎臓学会の活動のグローバル化
アジア・太平洋腎臓学会の活動支援、Asian Forum of CKD Initiatives (AFCKDI)の設立を通してアジアにおいて指導的な役割を果たして参りました。2010年4月京都でのISN (国際腎臓学会)NEXUS シンポジウではわが国の若手研究者が最先端の基礎と臨床の成果をもって、超一流の研究者と交流する大変良い機会を作ることができました。ISNの行事に積極的に参加してISNにおけるプレゼンスを強化し、2014年Asian Pacific Congress of Nephrology(APCN)(富野康日己先生会長)を成功させWCNの早期招致の実現を目指しております。
3.次代を担う人材の育成
腎臓学会が持続的に発展し、地域の医療ニーズに応え、腎臓病診療を充実させるためには人的資材の豊富な供給が不可欠であり、団塊の世代の後を見据えた人材育成が急務であります。臨床研修医のためのセミナー、腎臓専門医受験のためのセミナー、腎病理夏の学校などへ人的、資金的支援を積極的に行い、若手の育成を支援して参りましたが、さらに専門医制度委員会の内部組織として生涯教育委員会を設立して若手医師の教育と、専門医の能力維持発展(CME)をはかりたいと思います。
CKDの治療の実践のためにはチーム医療は不可欠です。諸団体と協調し保健師、管理栄養師、薬剤師、臨床検査技師などを対象とした啓発活動を行います。男女共同参画委員会の活動を通して、女性医師の診療・研究への参加しやすい環境が形成できるように学会として引き続き支援して参ります。
4.我が国の腎臓学基礎研究の基盤強化
これまで腎臓学、腎臓病学の基礎研究分野においても日本腎臓学会は世界に誇りうる成果を挙げて参りました。学会の健全な発展のためには、CKD対策で代表される臨床研究に加えて、基礎研究の強力な推進が必要であります。学会主導の学術総会開催を定着させ、学会主導プログラムとして、腎臓学の基礎研究の一層の強化という方針を反映させて行きたいと思います。また、現時点では企業主催の実施形態となっている基礎研究成果の発表を主体とする研究会にもコンセンサスを得ながら腎臓学会が共催として積極的に関わって参りたいと思います。さらに企画委員会において研究面での重要課題を集中的に討議する研究会の立案も検討して参ります。腎臓病診療を担う優れた人材を広く社会に送り出すことと同時に、腎臓学基礎研究を推進しうる研究者の育成にも注力致します。
5.一般社団法人化法に伴う組織改革
法人法の改正に伴い社団法人日本腎臓学会も一般社団法人化または公益社団法人の何れかを選択し、平成25年11月30日までに行政官庁の認可を受ける必要があります。理事会等の議論の結果は、日本内科学会および他の殆どの内科系学会と協調して一般社団法人化すると決定されています。あり方委員会のもとに「法人制度改革委員会」を設置して「定款変更」を行い「公益目的支出計画」を立案して参ります。
多くの先輩の先生方のご努力により、腎臓学と日本腎臓学会は発展して参りました。社会からの要請に答えるためにも誠心誠意、最大限の努力を致します。皆様の一層のご指導・ご支援を宜しくお願い申し上げます。