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検尿の考え方・進め方 - 第3章 1.健康診断における検尿



第3章 検尿の位置づけ
 健康診断における検尿

 集団検尿は、腎疾患の早期発見、早期対策という予防医学の面のみならず腎疾患の疫学、自然史(natural history)を知る上でも有意義である。わが国では母子保健法、学校保健法、労働安全衛生法、老人保健法による健康診断の項目の1つに検尿が定められている。母子保健法では、妊婦、乳幼児、3歳児を対象として尿蛋白などの検査を行っているがここでは詳しくは述べない。わが国では出生より老年期まであらゆる年齢層に検尿の機会があり、これを総称して生涯検尿と呼ぶ。ここで制度上問題なのは、学校にも職場にも属さない専業主婦が40歳まで検尿を受ける機会がないことである。
 また、検尿項目については、法的には尿蛋白、尿糖が主体で尿潜血は省かれることが多いが、実際の検尿の場では尿潜血も併せて実施されるのが通常である。

・学校検尿
学校保健法では幼稚園児から大学生までの児童・学生を対象としている。学校保険法によって定められた健康診断項目の1つとして尿蛋白、尿糖が規定されている。尿潜血については、必須ではないが実施が望ましいとの扱いである。

・職場健診
主として労働安全衛生法による。定期健康診断として全年齢で尿蛋白、尿糖が検査項目となっている。その他、有害業務の従事者に対しても特殊健康診断として尿検査が含まれるが、その内容は一般的な検尿から有害物質の尿中濃度まで広範で、ここでは触れない。

・地域住民健診
老人保健法によって40歳以上の地域住民が対象となり、蛋白、糖、潜血の検尿が実施される。受検率が必ずしも高くないのが問題点である。

・自己検尿の勧め
前述のように、制度上40歳未満の専業主婦は健診での検尿の機会がない。また、健康診断対象者でも機会は年に1回であり、健康管理の一環として、自己検尿は有意義である。しかし、OTC試験紙は制度管理を行えず、また判定の指示も不十分な面があり、医師の指導を受ける必要がある。これらをよく理解した上で活用を勧める。その有用性の発揮には直接指導に当たるプライマリケア医の役割が重要であることは言うまでもない。