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検尿の考え方・進め方 - 第3章 2.医療行為としての検尿



第3章 検尿の位置づけ
 医療行為としての検尿

 医療機関で通常行われる検尿では試験紙法によって、pH、比重、尿蛋白(蛋白/クレアチニン比)、尿潜血、亜硝酸塩(細菌の検出)、白血球反応(エラスターゼ)、尿糖(食後2時間尿が望ましい)が測定される。これ以外にも肝疾患、ケトーシスの検出目的でウロビリノゲン、ビリルビン、ケトン体も試験紙項目に含まれるが、ここではその意義については触れない。

・初診時のスクリーニング検査としての検尿
何らかの疾病の疑いで医療機関を受診した際の初診スクリーニング検査項目の1つに検尿が挙げられている。検尿は非侵襲的かつ低コストであり、スクリーニング検査としてのメリットを備えている。是非とも初診患者には必ず検尿を実施していただきたい。特に、それまでほとんど尿所見のなかった軽症(潜在性)の慢性糸球体腎炎(特にIgA腎症)では感冒罹患をきっかけに尿所見が増悪(時に肉眼的血尿を呈する、また尿蛋白の顕在化もみられる)し、発見のきっかけとなることも多く、common disease の初診時検尿が有効な例である。

・腎障害の可能性(合併症としての腎障害)
 が疑われるとき行う検尿
すべての通院患者に定期的に検尿を実施することが望ましい。特に、腎障害が合併症として高頻度に認められる慢性疾患患者(糖尿病、高血圧、関節リウマチ、高尿酸血症など)では、定期的に検尿を実施する必要がある。また、腎障害をきたしうる薬剤投与中、造影剤使用後、術後などの腎障害ハイリスク患者でも検尿を定期的に実施すること。慢性疾患の管理中の検尿については後述する。

・腎・尿路疾患の存在が疑われるとき行う検尿
排尿の以上(頻用、残尿感、排尿時痛、夜間尿など)、尿量(1日400mL未満や3,000mL以上)や性状の異常(肉眼的血尿)、腎機能異常時、高血圧、浮腫、貧血など、腎疾患を疑わせる徴候のあるときには、腎スクリーニングの1つとして検尿を実施する。その際には、病歴聴取、身体所見(血圧、浮腫など)、試験紙による検尿一式、そして血清クレアチニン、血液尿素窒素、抹梢血などの血液検査も同時に行うことになるが、予測される腎疾患によって検査内容が多少異なってくる。また、初診時スクリーニングや、慢性疾患経過中の検尿でも異常が見られた場合には腎疾患スクリーニングに準じて血液検査、画像診断を実施する。