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ASN2012レポート #1(文責:猪阪善隆)

 

ASN 2012 米国腎臓学会議  ASN Kidney Week 2012
開催日 2012年10月30日~2012年11月4日
開催地 米国 / サンディエゴ  http://www.asn-online.org/


11月3日 10時半よりHigh-Impact Clinical Studiesの発表がHall Dで行われた。大きな会場がほぼ満員で、大変熱気に満ちており、特に、最初に発表された3演題が同じ日にNEJMでon lineで発表されるという、文字通りインパクトの高いセッションであった。このうち、最初の3演題について、レポートする (文責 猪阪善隆)。


1. The Aliskiren Trial in Type 2 Diabetes Using Cardio-Renal Endpoints (ALTITUDE)

 高血圧合併2型糖尿病性腎症患者約8,600例において、従来治療(ACEIまたはARBを含む従来治療、ただし、ACEIとARBの併用は除外)にアリスキレンを併用したときの、心血管イベントと腎疾患に及ぼす影響を評価した、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験である。主要評価項目は複合エンドポイント(①心血管死②突然死からの蘇生③非致死性MI④非致死性脳卒中⑤心不全による入院⑥ESRDまたは腎臓死⑦血清クレアチニン値が倍増した状態が1ヵ月以上持続)で、副次目的が心血管合併症と腎合併症の発症遅延(心房細動の新規発症、すべての原因による死亡、すべての入院、蛋白尿の増加/減少、eGFRとバイオマーカーの変化など)となっている。
 ALTITUDE試験は、直接的レニン阻害薬の上乗せが、心血管イベントおよび腎合併症の発症を遅らせることが期待されたが、中間解析の結果、試験が中止となった試験である。
 平均約33カ月のフォロー期間で、主要複合エンドポイントはアリスキレン群18.3%、プラセボ群17.1%(ハザード比1.08 [95%CI 0.98-1.20] p=0.12)であり、副次複合エンドポイントも同様の結果であった。血圧はややアリスキレン群で低下し、アルブミン尿/クレアチニン比はアリスキレン群で有意に減少していた。
 アリスキレン群で、高カリウム血症や低血圧などの副作用が多かったことが報告されている。NEJM誌には記載されていないが、私が興味深く感じたのは、高カリウム血症の有無によるサブ解析である。ベースラインのカリウム値が5未満の場合、主要複合エンドポイントはアリスキレン群17.9%、プラセボ群17.4%(ハザード比1.03 [95%CI 0.92-1.14])であるのに対し、カリウム値が5以上の場合、主要複合エンドポイントはアリスキレン群20.8%、プラセボ群15.0%(ハザード比1.48 [95%CI 1.14-1.92])と、アリスキレン群で有意にリスクが増加している。心血管イベントでも同様の結果であり、高カリウム血症が存在するにも関わらず、アリスキレンを併用した場合にリスクが増加すると考えられる。



2. Tolvaptan in Patients with Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease: The TEMPO 3:4 Trial

 ADPKDの患者に対して、vasopressin V2受容体拮抗薬であるトルバプタンが、嚢胞の形成や腎機能の悪化を抑制するかどうか、検討した試験がTEMPO研究である。腎臓のサイズが750ml以上で、GFRが60ml/min以上のADPKD患者が対象である。
 主要アウトカムは、腎臓サイズの変化率であるとされた。副次エンドポイントには、①腎機能の悪化②腎臓痛③高血圧④アルブミン尿である。
 3年間の観察期間で、腎臓のサイズの増大は、トルバプタン群で2.8%/年[95%CI 2.5-3.1]に対し、プラセボ群5.5%/年[95%CI 5.1-6.0; p<0.001]と有意に改善させた。腎機能の悪化速度や腎臓痛に関しても、有意にトルバプタン群で改善を認めた。ただし、トルバプタン群で口渇感や多尿などにより脱落が多く観察された。現在、すでにトルバプタンは心不全に対して、保険適応となっている薬剤であるが、今後ADPKDに対しても、保険適応となることが期待される。



3. Evaluation of Cinacalcet Therapy to Lower Cardiovascular Events (EVOLVE) trial

 二次性副甲状腺機能亢進症(2HPT)の血液透析患者を対象に、カルシウム受容体作動薬であるシナカルセトが、これらの患者の死亡あるいは非致死性の心血管イベントリスクを低下させるか検討した第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験がEVOLVE試験である。約3900例の患者が、シナカルセト群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。
 主要評価項目である複合エンドポイントは、①死亡②心筋梗塞③心不全④末梢血管疾患⑤不安定狭心症による入院の発生までの期間とされた。副次エンドポイントには、骨折および副甲状腺摘出術(PTx)発生までの期間が含まれた。評価は、intention-to-treat(ITT)解析を中心に実施した。 ITT 解析において複合エンドポイントに達したのは、シナカルセト群で48.2%、プラセボ群で49.2%であった。未調整のITT 解析においてハザード比は0.93(95%CI 0.85-1.02)で、シナカルセト群で複合エンドポイントの7%のリスク低下が認められたが、有意差はみられなかった(p=0.11)。
 また各エンドポイント別のITT 解析では、心不全のハザード比が0.82(95%CI 0.68-0.99)でシナカルセト群において18%の有意なリスク低下が認められた(p=0.03)が、死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、末梢血管疾患イベントには有意なリスク低下は認められなかった。
 両群ともに試験からの脱落率が高く、プラセボ群で70.5%、シナカルセト群で66.7%の患者が脱落し試験薬の投与が中止となったこと、脱落後のプラセボ群の患者の一部が市販のシナカルセト服用したことなどが、解析結果に影響したと考えられる。これらの影響を考慮し、試験薬投与中止6ヵ月後で打ち切ったデータを用いて解析(Lag-Censoring Analysis)を行った結果では、ハザード比0.85(95% CI 0.76-0.95)でシナカルセト群において有意な複合エンドポイントの改善が認められた(p=0.003)ことが報告された。


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