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検尿の考え方・進め方 - 第4章 1.蛋白尿および血尿(1)



第4章 臨床に役立つフローチャート
 蛋白尿および血尿(1)

蛋白尿、血尿は、一時的なものも多いが、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症など腎臓の病気の徴候である場合があり、また、背景に高血圧や膠原病といった腎臓以外の病気が隠れている可能性もある。血尿が主体の場合には、泌尿器の癌や結石などがないかも考慮する必要がある。
 これらの病気はなかなか自覚症状(むくみやだるさ、頭痛やしびれなど)が現れないため、長い時間をかけて徐々に進行し、気付いた時には病気がかなり進行しているおそれがある。そこで、蛋白尿や血尿といった尿異常が指摘された場合には、一時的なものかどうか、病気が潜んでいないかを精密検査によって調べる必要があり、定期的な検尿を繰り返す必要がある。
 ここでは大きく4段階に分けて、段階に応じた検査の内容を示す。

第1段階
尿検査異常の発見
(1)学校検尿に関しては各医師会で方式が決められており、それに従って早朝第一尿の試験紙法による検尿が行われる。一方、会社健診や自治体健診などでは随時尿であることも少なくない。
(2)蛋白尿の検出には、起立性蛋白尿を否定するために早朝第一尿の検査が第1段階としては必須である。また血尿は、ヘモグロビン尿およびミオグロビン尿を否定する上で、新鮮尿の尿沈渣検査が必須となる。早朝第一尿では持参することにより時間が経過し、尿中の赤血球が破壊されるためである。また尿沈渣における円柱〔赤血球(RBC)、顆粒球、白血球など〕の存在は強く糸球体疾患を示唆し、病的意義が高い。
 
第2段階
尿検査異常の確定
蛋白尿:試験紙法で尿蛋白が(±)(15mg/dL以上)の場合は、その正否を判定するためピロガロール・レッド法(またはスルホサリチル酸法)でアルブミン尿かを判定する。それで(-)であれば着色尿、高比重尿、酸性ムコ蛋白などで病的意義はない。病的な尿蛋白は1日150以上である。試験紙法では尿蛋白(+)は30mg/dL以上なので、濃縮尿では性状でも(±)~(+)と偽陽性になる可能性があり、逆に希釈尿では偽陰性になる可能性があるので注意する。
血尿:血尿は尿沈渣においてRBC≦5/HPF(high power field:協拡大の視野)は正常範囲と考える。3回繰り返した検査でいずれもこの範囲であれば異常なしと考える。
尿検査で白血球、細菌が見出されたとき、無症状の場合は、外陰部での汚染の可能性を検討する。
 
第3段階
原因診断
蛋白尿:起立性蛋白尿などの生理的蛋白尿でなければ、無症候性蛋白尿は糸球体疾患と考えて腎生検の適応を考える。特に尿潜血反応陽性に加え蛋白尿が認められる場合は糸球体疾患である。これらは腎臓内科医による治療が必要である。尿蛋白が0.5g/日〔定性(+)程度〕以下であっても積極的な腎臓内科医による治療が必要である。
血尿:RBC 6~20/HPFは尿潜血反応陽性で慢性糸球体腎炎に多く、それ以上は尿蛋白陰性で、痛みや炎症所見がなければ無症候性血尿となる。
 
第4段階
原因診断と治療の開始
蛋白尿:腎生検の適応:各施設によって適応に幅があるが、尿蛋白が0.5~1.0g/日以上、、または血尿や細胞性円柱が合併する場合には一般的に適応となる。
血尿:尿潜血反応陽性、無症候性血尿で持続性のものは小児期から継続しているものであれば家族性血尿、アルポート症候群、菲薄基底膜症候群などを考え、突発的な肉眼的血尿では腎動静脈瘻、ナッツクラッカー現象、行軍ヘモグロビン尿症などの可能性を考える。画像診断では超音波検査を第一次検査と考え、それで異常が見つかる疾患には癌、結石、血管異常、嚢胞性腎疾患、先天異常など泌尿器科的疾患がある。癌に関しては基本的に経過観察では3年以上経過し形態異常を発見できない場合は、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎として診療する。